谷川俊太郎さんの魔法

宮崎県のある高校に谷川俊太郎さんが出前授業に訪れたときのこと。
女生徒がおずおずと質問をした。
「小さい頃迷子になった思い出を<ぬくもり>という詩にしたいけど、うまくまとまりません」

谷川さんは
「それじゃ一緒に作っちゃおう」とすーっとホワイトボードの前に。
「迷子の君を迎えに来たのは誰?」
「そのときお母さんの様子は?」
「お姉ちゃんは?」
谷川さんは次々と質問をして答えをボードに書き並べていく。

泣きながらしがみついた
お母さんは おこってた
お姉ちゃんは 私に言った
「どんくさい!」
うれしいけど 腹が立った
三人で手を繋いで 歩き出した
手があたたかくなった

それだけで詩になってしまった。

さすが、谷川さん。

2/11 朝日新聞 より