朝起きたら

涙が一筋頬を伝った。理由は明確。さっきまで見ていた夢のせいだ。

去年の昨日、私は病院にいた。
仕事を早めに切り上げて母のいる病室へ。扉をあけると、すでに父と妹とがベッドのわきに立って母と楽しそうに話している。
「お帰り。待ってたよ」
みんなの目が一斉にこちらを向く。ベッドに近寄り布団の上で持参したお土産のケーキの箱を開けると、みんなの顔が一層綻ぶ。
「ろうそくは難しいね」
と私。
「病院だしね」と妹。
「いいじゃない。無くても」と母。
「ま、いっか」と私たち。「じゃあ」母、妹、私で呼吸をそろえる。
「パパ、お誕生日おめでとう♪」ぱちぱち〜小さく手を叩く。パパの口がにやっと動く。

昨日の夢はそんな懐かしい思い出のダイジェスト版。
ママが病気だった去年の方が幸せだった?

昨日はまた12時まで残業。明日の午前中までの頼まれ仕事、一件断ったにも関わらず。日付が変わるギリギリのタイミングで父にメールを慌てて送った。
「パパ、お誕生日おめでとう」

帰りのタクシーで携帯のバイブがなる。
「ありがとう。 父」
みんなそれぞれの生活に戻って離ればなれになっちゃったけど。
生きてるから、いっか。

涙をふいてのびをして。ゆっくりとベッドから出た。