伝える


週末の夜、年下の広告会社の担当さんと打ち合わせがてら表参道の「元」っていう居酒屋さんでお夕飯をした。

見たところ、25,6歳くらいかな。入社して2,3年経って、いろんな経験積んで、仕事が少しずつ面白くなってきている頃なんだろうな。学ぶ意欲まんまんな感じで
「最近楽しいことは何ですか」、って聞いてきた。

ん〜。なんだろ?
しばらく考えて、

「人から新しいこと、面白いこと、感動したことを聞いて、それを大切な友人や家族に伝えることかな」
って答えた。

彼女の表情が一瞬硬直した。
しばらく沈黙して、彼女が答えた。
「すごい、すごい、心臓が停まりそうになりました」

なんで?

彼女はまたしばらく沈黙して、やがて緊張気味に、ゆっくり口を開いた。
「今まで、私、自分が面白い、感動する経験ができて嬉しい、ってとこで止まってました」

そっか。彼女の感動ポイントがのみこめた。

「そうだよ。感動は、誰かに伝えて、循環させると、もっと楽しくなる」

彼女より少しばかり長く生きてきた私は、自分の経験を自分の中だけで楽しむのではなくて、分かち合うことの喜びを知った。こんな経験をした、こんな面白いことを聞いた。伝えれば伝えるほど、自分が伝えた以上に、今度は別の人が、こんなこと聞いたことある?こんな楽しい出来事があったの、とまた次なる興味深い話を教えてくれる。

自分だけではなくて、話を教えてくれた人とはまた別の人に伝えていくと、”感動のいい循環”が生まれていくもんだよ。

彼女がヴィトンの手帳に、シルバーのボールペンで、「感動は循環させる」と大発見したように嬉しそうにメモっていく様子を見ていたら、一緒に宝物を見つけたようにいい気分になって、私も嬉しくなった。