いろいろつながってくるお話。

ギャラクシー賞受賞番組を聴く会の懇親会で、同じ選奨委員メンバーのYさんから、
ぜひ私に「引き合わせたい人がいる」と
Kiss-FMインターネットラジオKizznaで活躍中のDJ、Nさんをご紹介いただきました。

Nさんは大阪の出身。奥さんも神戸出身で、私と同じ台湾系の在日華僑三世とのこと。
引き合わせてくれた理由は、同じラジオ業界仲間として、というのもあるけれど、
それよりもまず、奥さんと私のバックグラウンドが似ていることを知らせたかったからとのことでした。

近くYさん、Nさん、Nさんの奥さんとご飯をする予定だから、よかったらご一緒いかがとお誘いいただいて、
さっそく週末、Yさんおすすめの、ニュージーランドワインとお料理が堪能できる、
「アロッサ銀座」へ。


奥さんの名前はKさん。
お互いその日がはじめましてなのに、すぐに打ち解けてしまえたのは、私たちが共有する文化、歴史が持つ独特の特殊性のなせる技。
「ねえ、あれ、どうなってる?」お互いに財布をそっと取り出してすぐに確認しあったのは外国人登録証。
「中国?」「うん中国」
人によっては中華民国になっている出身地の部分、私たちは「中国台湾省」になっている。
めったに持てない、幻のゴールドカードを見せ合うような感覚といったらいいんだろうか。
持っている人にしか感じ得ない特別な感情みたいなものを共有できて、嬉しかった。

「この環境でのお悩みポイントって?」「結婚のときの帰化かな」
通称名としてだんなさんの苗字も使えるけど、基本結婚しても性は変わらなくって、病院なんかでは旧姓で呼ばれる。」
「名前は?」「からかわれることもあったし、PCで漢字が出てこなくって困ることも」

こうなってくると、もうなんだか確認大会。

長らく妹と私で、両親とも祖父母とも違う、三代目だからこそ味わう微妙な体験や気持ち、華僑ならではの文化。
時に心細く、不安になりながら試行錯誤を繰り返してきた思いを、面倒なところをすっとばして短時間で共有できてしまう心地よさ。
私たちだけじゃなかったんだ、っていう安心感。

それだけじゃなくって。
「車乗るときの酔い止めって・・・・」「話梅(ファーメイ)じゃなかった?」
「そう!そう!そう!紹興酒にいれたことは?」「あるかも!」

話梅はコンビニなどで売っているスッパイマンみたいなのって言ったらいいのかしら。
乾燥している梅干しです。
ちびっこは三半規管が弱いので車に酔いやすく、母からよく「なめときなさい」と言われ、白っぽい粉のまぶされた話梅をしゃぶらされていたのでした。

そんな会話を、だんなさんのNさんはやさしく聞いているのです。

「神戸、先日ちょうども行ってきたんです。Kiss-FMものぞきたくって、オフィスの前までは行ってみたのですけれど、関係者以外立ち入り禁止だったんで番組表だけいただいてきました」
「事前に言ってくだされば、喜んでお通しできるようにしておいたのに。次回行かれる時はぜひおっしゃってくださいね。いろいろご案内しますよ」なんてこともおっしゃってくれました。


阪神淡路大震災当時にKiss-FMにいて、ラジオの大切さを身をもって知っているYさんやNさん。
Kiss-FMは震災時、在日外国人向けの情報が少ないと英語やその他外国語で積極的に情報発信していたことで個人的にも興味をもっていたラジオ局。
先日脚本家の北阪昌人さんにお話を伺っていたとき、一番印象に残っていたのもやはりKiss-FMで放送された北阪さん脚本の『海の真珠』という作品にまつわるエピソード。

神戸の街を描いた、『海の真珠』という作品は、震災前に応募をし、震災後に受賞の連絡を受けていて、言ってみれば震災に拾われた作品なんです、と何やら不思議な話をしてらっしゃった。
選考委員長の阿久悠さんから、 「この作品は大震災がなければ、受賞に推さなかったかもしれない。 なぜなら、ここには美しい神戸、我々がよく知る神戸が描かれていて、震災前なら何を今さらと思っただろう。 でも震災を経験してみると、それがどんなに尊いものか、はかないものかわかる。復興の願いをこめて、この作品に決めた」といわれたのだそうです。
(参考:北阪昌人さんコラム


なんだか、不思議な感じ。私の周りで、また何か、新しいことが始まりそう。そんなわくわくした気持ちがしています。