3億円の積み木

少し前にロビン・ウィリアムスのRVという映画を見た。
RV コレクターズ・エディション [DVD]
仕事人間のパパ(ロビン・ウィリアムス)と、反抗期にさしかかった子どもたちと、ヒステリックなママとのファミリー物語。

ロビン・ウィリアムスはバラバラになりかけている家庭になんとか平和な暖かさを取り戻そうと家族奉仕を決意し、みんなにハワイ旅行を提案する。でもそのとたん、上司にコロラド行きの仕事を命ぜられてしまう。急遽コロラド行きのキャンプを思いつき、家族を無理やり連れてゆくも、途中で何度も上司から仕事の呼び出しに難航してしまう。でも家族にはいつもの仕事人間の自分は見せたくない。山奥で必死に電源を探してPC操作しようとしたり、腹痛を装って会議に抜け出したりと苦労しながら何とか仕事と家族奉仕を両立する物語。


メルヘン誕生―向田邦子をさがして
この数日で、高島俊男氏の「メルヘン誕生〜向田邦子をさがして〜」を読んだ。向田邦子さんの文才を高く評価する一方で、彼女を人生の敗北者と言い切る痛烈な批判書。向田さんとゴールデンコンビと言われた久世光彦氏には、帯で「向田邦子の言葉と文章についての本は、これ一冊あればいい。そしてもうこれ以上なくていいと思う」と言わせている。”これ以上なくていい”というのは非常によくできた向田邦子さんの評論だという褒め言葉では決してない。僕らの大切な向田さんをもうこれ以上ひどく言わないでくれ、という意味である。それくらい辛辣な批判に満ちている。

文章の才能を見出され、放送作家、エッセイスト、小説家、作家として活躍。仕事に生きた向田邦子さんは、生涯秘めた恋はうわさされても、結婚しなかった。どんなに人より優れた才能があり、周囲に評価され、仕事に生かせたとしても、結婚できなかった女性としての敗北感や焦燥感が作品にも反映されているのだという。


つい先日、職場の先輩に言われた。
「仕事はいつでもできるんだから。今本当にやらなくちゃいけないことは、お母様のそばにいてあげることなんじゃないか」
「難しい仕事をこなしたら自分はもっと成長するはずと信じているのかもしれない。けど、おまえが妹さんやお父さんと協力して、お母さまが回復するまでがんばり続ける方が実はもっと難しいし、成長するはず。それがきちんとできたら、今からやろうとしてるプロジェクトなんてまったくもって大したことない」


こうしたさまざまな形のさまざまな先人たちのアドバイス、助言、メッセージによって。
やっと私は今まで執着していた一番大きな仕事のプロジェクトメンバーから外れる決心が付いた。


昨日までの目標は、トータルで3億円の予算に見合う、大プロジェクトの企画・運営。
明日からの目標は、母が車椅子に乗れるように。積み木を重ねられるように。見守り、応援すること。


難易度を単純比較することはできないけれど。
今の私には3億円より積み木。
ママ、あなたの積み木は3億円の価値があるのよ〜