シルバーシートエンジェルちゃん

のんびり電車に揺られてウトウト。 青山一丁目を過ぎたあたりかしら。停車駅で扉が開き、白いワンピを着た見た感じ20代半ばくらいの女子がいきなり「シルバーシートエンジェルで〜す!」と元気に名乗りながら乗り込んできた。

車両の隅っこに座ってた私は何だか突然抜き打ちテストされる生徒気分でシルバーシートエンジェルちゃんの演説らしきものを聞く羽目に。

「みなさん、シルバーシートにお座りではないですか?」

そ、そりゃ、シルバーシートは元気な若者は遠慮すべき場所ですよ。そんなことわきまえてますよ。私と同じく車両の隅っこシートに座ってた人々は、でもさあ。と顔を見合わせた。

そして。事態はシルバーシートエンジェルちゃんの目論見とはかけ離れた意外な方向へ。

「みなさん!シルバーシートに。。。」

おっさん、学生、おばさん、私。隅っこシートに座ってる私たちを見て演説をしかけていたシルバーシートエンジェルちゃんの表情が固まり、言葉が途切れる。

ふふふ。だから、わきまえてるって言ったじゃん。

抜き打ちされた生徒たちの逆襲の始まり。

「ない。シルバーシートのシール、ないですね。ははは。はは。失礼しました」

シルバーシートエンジェルちゃんは顔を赤らめ始めた。


この車両、珍しく隅の席にシルバーシート指定してなくて、いつもの老人、怪我人、妊婦さんシールも貼ってないごく普通のシートになってたのでした。

次の停車駅までの数分間。申し訳なさそうに俯いているシルバーシートエンジェルちゃん。次の駅で扉があくと、そーっと降りてゆきました。


でもね。シルバーシートエンジェルちゃんの呼び掛け、無駄ではなかったですよ。私たちの席近くに老夫婦が乗ってきて、
シルバーシートだろうとなかろうと、譲るべき人が現れたら席を立つんだい」とでも言いたげに。勝ち誇ったように颯爽と若者が立ち上がって彼らに席を譲ってましたから。


リマインドありがとって感じです。o(^-^)o