授業終了★

無事、収録終わり、ただいま、自宅へ帰ってきました。現役高校生たちの生の声は3/3、耳の日オンエアを聞いていただくとして、ここではわたくしのごくごく個人的な視点からレポートします。


今日の感想を一言でまとめるなら、国際生ってやっぱり素敵!

お邪魔したのは国際理解科目のひとつ、社会生活の授業で、20人くらいのクラス。
1:45からの7時間目、8時間目の授業をお借りしました。
最初の1コマで番組を聴いてもらい、次の2コマめでみんなに自由に感想を披露いただくっていう単純な構成だったのだけれど。

私の中では、一生の宝物になる、貴重な体験でした。

聞いてもらったラジオ番組『イ・ヒアショパンの調べ』はドキュメンタリードラマ。
韓国人ピアニスト、イ・ヒアちゃんは先天性の身体障害により、両手の指は左右2本ずつ、膝下からの足がない。でもその4本の指で、ショパンを美しく弾きこなす。どうして彼女はピアノを弾くようになったのか、彼女と彼女の家族がたどった道のりを、日本で出会った韓国人留学生の金 栄姫(キム ヨンヒ)さんと在日華僑の私で紹介するストーリー。

第二回日本放送文化大賞グランプリ(詳細はこちら)、第33回放送文化基金賞詳細はこちら)などをいただいているので、きっといい作品って感じてもらえるだろうな、と期待する半面、いやいや、いきなり押しかけ女房のようにでかけていって、特にラジオ聞きたいってモードではないみんなに、いきなり40分強ものあいだ、音だけの世界に押し込んだら、消化不良おこしちゃうんじゃないかって、内心すごく不安だったりもした。


でも。

ありがたいことに。


聞いてくれました。


とっても、まじめに。



途中、落ちそうになってる方もいらっしゃいましたが。
そういう人はそういう人で。そうです、私の声は、昔から、子守唄のよう、と言われてるんで、やむなし、と開き直ることにして。


途中で手持ち無沙汰になって授業とは関係ない雑誌や参考書読みだしたり、携帯電話いじったりしだすことなく、鑑賞しとおしてくれていたことに、まずはほっとしました。


そして、
みんなの鑑賞姿勢観察の一方で。
私は私で。
今からちょうど二年前。ある日の収録帰り、「特別番組を作ろうと思って」、ってディレクターさんに言われた日のこと、その後、自分の今までの経験をいろいろ振り返って、夢中になって自分の思いを書き綴ったものを脚本の中に入れ込んでもらったこと、ヒアちゃんの演奏を実際に高校時代の同級生mayuと聞きに行った日のこと……。嬉しかったこと、楽しかったことをいろいろに思い出し、同時にこの番組が制作にあたってもたらしてくれた充実した日々を懐かしんでいました。


作品はディレクターさんがCDに焼いてくれたので、電車の中、部屋の中、お風呂の中、いろんな場所で、もうかれこれ、10回以上も聞いているのに、やっぱり今回も自分の辛かった思い出を告白するくだりでは、昔を思い出してぎゅっと胸をしめつけられる思いになる自分がいて。あーまだまだ弱いのね、私って、って思ったり。


広々とした教室で大き目の音声で聞くと、シアターや美術館にいるような心地よい気分になって、案外、ながら視聴ではなく、聞くことそのものを目的にした鑑賞スタイルがあってもいいのかな、なんて感じていました。



みんなからの感想は、ほんとうに、ほんとうに、国際生ばんざーいってコメントばかり。


マイノリティを題材にした作品は、たいていの場合、いい子の感想で終わってしまう。
「私もがんばらなきゃと思った」「障害があるのに克服し、勇気を与える存在になるまで自分を追い込んでトレーニングする姿勢はすごいと思った」なんていうふうに。

でも、国際生は違った。


「障害を持つ人を特別視したくない自分といつも戦っていて。でも、そういうのを超えて、彼女が生み出すパワー、ピアノの美しさに素直に感動できた」

「彼女の低い身長、指の奇形を見て、わーオバケだ!とからかった子どもたちに、『そうだよ、私はオバケだよ。だから一緒にオバケの遊びをしよう』と答える彼女のきりかえしに驚いた」

「音だけで表現される世界が、こんなにも鮮やかで美しいことをはじめて知った」


「私の父も障害を持っています。これまで煩わしいと思っていた両親の小言や態度が、愛情に基づいた尊いものだったことに気づきました」

発表の途中から涙がとまらなくなって、でも、必死になってコメントしつづけてくれた子が二人も。


急にマイクを向けられ、とまどっている様子の男の子もいて。やっぱり、そうだよね、いきなり感想言ってって言われたって、そりゃ言いづらいよね。って申し訳なく感じていたら、
「感想を言うよりも、だまってじっと感じていたい気分なんです」とそっと話してくれて。

無理やりにいいコメントを探さず、そのままの気持ちをぶつけてくれて。嬉しかった。

私は、気づくと、みんなと同じ、あの日、高校二年生だったころにタイムスリップしていた。
作文や、レポート、新聞。書くことが大好きだったあの頃の自分に。

10数年前の今頃、私は生徒側にいて。今日と同じように、授業のゲストだった国際ジャーナリストの鶴田さんに感銘を受けて、私もいつか、あんなふうになりたいと強く思ったんだった。

今度は、私が恩返しをする番、てどこかで強く思っていたんだよね。
押し付けがましくしたくなかったから、あまり明確なメッセージは伝えなかったのだけれど。
最近の私は、実は、とても、まともに働けている精神状態ではないのだけれど。
元気な部分の私を、見せたいって、強く願って、その願いが今日、こんなにも素敵な感じで聞き届けられたことを、本当に幸せに思っています。