それで結局、

週末は、お掃除とか、原稿書きとか、企画書とか、いろいろあったのだけど、
合間を縫って、気になっていた『チルドレン』、DVDも観て、小説も読み終えちゃった。

チルドレン [DVD]チルドレン (講談社文庫)
で、大森南朋さんの次は作家、伊坂幸太郎さんのセンスにやられております。

DVDは、小説のいいとこどりをしつつ、さくっとフランス映画っぽく、おしゃれに仕上げているのだけれど、小説も読んで正解。

DVDでは、大森南朋さん演じていた家裁調査官・陣内も、それから役者さんの名前忘れちゃったのだけど、盲目の青年・永瀬も端役だったけど、小説ではもっとそれぞれが中心的存在感をもつ形で描かれている。

伊坂幸太郎さんの、世の中の出来事や成り立ち方に対する姿勢、好きかも。っていうか、スタンスいっしょかも。

例えば、「いじめがありました、勇気ある青年が現れて、救いました」って展開について。正直言うと、そういうの、そろそろ、飽きた。っていうか、現実にそういったいい話は巷に溢れているけれど、それで世の中変わったかというと、相変わらず、いじめはあり、犯罪もありつづけている。残念なことに。

伊坂さんの場合。いじめの現場に立ち会った勇気ある家裁調査官に「なにやってんだおまえら」といじめっこたちに向かって言わせ、一見、正義の味方と見せかけといて、すかさずいじめられっこを殴る展開にする。「え?」「え?」いじめっこも、いじめられっこも、予想外の展開にきょとん。そして子どもたちは退散してく。

いじめられっ子をいじっめっ子以上にいじめるやつが現れたら、それ以上、いじめっ子はいじめる気にならないだろうって論理。あるいは、「正義」以外の倫理観が存在したっていいんじゃないかっていうアンチテーゼ。

あと、私の好きなのは、盲目の大学生永瀬が、気の毒にね、と見知らぬ婦人に同情され、5000円をもらったとき、それを見かけた友人、陣内の反応&セリフ。

「おまえ、持ってる5000円どうしたんだよ?」と陣内。「どこかのおばさんにもらったんだ」盲目の青年永瀬は気にしてないとでもいう風に冷静に答える。「ふざけんなよ」陣内は怒り出す。「いいんだ、悪気はないんだよ」善意を押し付けてきたおばさんをかばう永瀬。

ところが陣内は「よくねえよ、なんでおまえだけなんだよ、なんで俺がもらえないんだ」と悔しがる。「多分、僕が目が見えないと思ったからじゃないかな。盲導犬連れてるし」「は?そんなの関係ねぇだろ。ずるいじゃないか」と喚きだす。

模範解答のさらに上をいく回答を見たような小気味良さを感じてしまう。

kinu姉さんから頂戴した『重力ピエロ』にも言えるのだけれど、伊坂作品は基本、ミステリーなんだけど、どろどろしてなくて、読んだ後には爽快感。かっこいい話読んだ〜って気分になる。

チルドレンは、構成自体も、おしゃれ。5つの短編からなっているのだけれど、そのどれもが別々の主人公の視点から描かれていて、その話の全編に”型破りだけど憎めない、なぜか子どもにも好かれる魅力的な陣内”が登場し、時間は前後しながら、彼が家裁調査官をめざすいきさつが明かされるようなしかけになっている。


今まで、ミステリー、ほとんどノーチェックだったけど、伊坂さんは今年から来年にかけて映画化・ドラマ化される度ナンバーワン作家さんらしいので、(日経エンタテインメント調べ)楽しみにしておこう♪